今オフのFA先発投手でトップ評価だったダルビッシュがカブスとの契約に合意し、スプリングトレーニングを目前に控えて先発投手市場も動き出すかもしれません。
ダルビッシュとジェイク・アリエッタの2人に次ぐ2番手グループとして扱われているのがアレックス・コブとランス・リンです。
レイズからFAとなっているコブは、レイズで一緒だったジョー・マドン監督とジム・ヒッキー投手コーチがカブスにいるため、当初はカブスとの契約が濃厚と見られていました。
しかし、コブが年平均2000万ドルを望んでいるという報道もあるなど、両者の間に条件面での隔たりがあったようです。そして、今回ダルビッシュがカブスと契約に合意してローテーションが埋まったため、コブのカブス移籍の可能性は消滅しました。
ダルビッシュにオファーを出していたツインズやブルワーズが先発投手を必要としている状況に変わりはないため、次はコブを獲得候補の1人として交渉が本格化するかもしれません。
さて、今回はそんな状況のコブに関するBaseball Prospectusの記事を紹介します。以下に引用する画像はすべて「Rubbing Mud: Alex Cobb vs. PECOTA」からです。
この記事では、Baseball Prospectusの成績予測システムPECOTAではコブの今年の成績が良くないということについて考察されています。
まず、FA先発投手のトップ4とされるダルビッシュ、アリエッタ、リン、コブのPECOTAによる今年の成績予測の一部が次の通り。
イニング数が少ないのは故障歴、特にアリエッタ以外の3人は最近トミー・ジョン手術を受けていることが理由でしょう。
右の2つの数字は置いておいて防御率を見ると、コブは4.92と4人の中で最も悪くなっています。
記事でその理由として指摘されているのが、トミー・ジョン手術から復帰して以降の球種選択の変化です。
コブは2015年5月に手術を受け、2016年9月に復帰しました。グラフを見ると、復帰以後は紫で表示されているスプリッターが激減し、ほとんどシンカーとカーブの2球種の投手になっていることが分かります。
この変化は投球内容の悪化につながっています。
手術前と比べると、ボールゾーンスイング率、コンタクト率、ゴロ率が悪化しています。打者がボールを振ってくれず、バットに当てられる確率が上がっているということは当然、奪三振も少なくなります。
手術前の奪三振率は2013年が8.4、2014年が8.1だったのが、2016年は6.5、2017年は6.4へと低下しています。
この内容の悪化がPECOTAでの予測成績が悪い原因となっているということです。
どうやら手術後は以前と同じような感覚でスプリッターを投げることができなくなったために、投球割合が大きく下がっているようです。
また、記事ではPECOTAによって提示されたコブに類似した選手が挙げられています。コブは現在30歳なので、29歳までの成績が似ている選手です。
左上のジョーダン・ジマーマンから下に向かって順番にコブに似ているという選手が並んでいます。
故障に苦しんだり成績が低下したりした選手が多く目につき、コブの今後が不安になる面々です。
ただし、コブは過去3年のうちほとんど丸2年はトミー・ジョン手術で休んでいるため、適切な比較対象でないかもしれないと記事では指摘されています。
そこで、昨年のコブのように、29歳で150イニング以上投げ、平均以上の成績を残した選手を上の30人の中から抜き出すと次の6人となります。
こちらの6人を見ると、上の30人より少し安心できるメンバーです。
そして、一番右のコマンドスコアの部分を見てください。”コマンド”は「意図したところに投げる制球力」というような意味です。また、コマンドスコアは100を最高とする指標だということです。
コブの2017年のコマンドスコアは63で、昨年150イニング以上投げた投手75人のうち9位だったとのこと。
コマンドスコア、イニング数、投球内容を示すcFIPで、コブがザック・グレインキーやジオ・ゴンザレスと似た数字を記録しているのは期待が持てる点だと書かれています。
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以上のことから、コブは過去3年のうちほぼ丸2年離脱しているため、PECOTAは適切な成績予測ができておらず、やや極端な数字を弾き出してしまっている、と記事ではまとめられています。
それと同時に、PECOTAが悲観的な予測を出す原因となったリスクについては、コブ獲得を選択肢に入れている各球団も考慮しているはずだとしています。
冷え込んだFA市場と今回紹介した内容を考えると、コブに希望通りの条件のオファーが届く可能性は低いでしょう。スプリングトレーニングも近づく中、どの程度の契約で妥協するのかという話になりそうです。
また、コブにどのような内容の投球が期待できるかのバロメーターとして、スプリッターのキレや投球割合に注目してみたいと思います。
Photo: Arturo Pardavila III