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スプリングトレーニングも間近に迫る中、いまだ100人以上のFA選手が未契約のままとなっています。この異常事態に、ドジャースのケンリー・ジャンセンがストライキの可能性に言及したり、代理人が怒りの声明を発表するなど不穏な空気が漂っています。

停滞するオフシーズンの原因のひとつは、完全に優勝をあきらめ徹底的な再建を行う球団が増えていることです。

わざと勝てないチームを作って翌年のドラフトで上位の指名権を狙うことを”タンキング”といい、最近はこの”タンキング”を行うチームが増え過ぎではないかという声があります。

今日も、選手会の専務理事トニー・クラークがタンキングを行うチームを批判する声明を発表し、MLB、選手、代理人がそれぞれに意見を主張し合っている状況です。

ベースボールアメリカの編集長J.J.クーパー氏が昨日、タンキング防止策を提言していましたので内容を紹介します。


クーパー氏はまず、「ベースボールは模倣のリーグだ。完全な解体を経たチームが3年連続でワールドチャンピオンに輝いている以上、他のチームがそのやり方を真似しようとするのは理解できる」とし、「現在のシステムが、健全さという意味で理想的だと考えている関係者はほとんどいない。しかし、GMはこのスポーツの健全さの助けとなる判断をすることで契約をもらえるわけではない。システムを直したいなら、65勝ではなく75勝や80勝するほうが望ましいようにインセンティブを変えなければならない」としています。


まず考えられる案は、ドラフト指名権のくじ引き制度。

成績の悪いチームに上位の指名権が当たりやすいくじ引きだとしても、リーグワーストのチームが必ず最上位の指名権を獲得できるわけではなくなります。

ただ、クーパー氏は「これはNBAが数十年間取ってきたアプローチだ。少しでもNBAに関心を持っている人なら、何シーズンも負け続けることを防ぐ効果がほとんどないことに気づくだろう。…くじ引きはタンキングを防止する効果はあまりない」としています。


もう一つの案は”サラリーフロア”の制度です。

各チームが使わなければならない最低限の年俸総額を決めることで、より多くのベテラン選手が契約を結ぶことができるだろうというもの。

しかし、この案についても「サラリーフロアは勝つインセンティブを与えるものではない。再建中のチームが最下位を目指して争う現在と同じ構造は残るだろう。唯一の違いは、タンキング中のチームがサラリーフロアの基準に達するために、プロスペクトとセットで他球団の不良債権の選手を引き受ける可能性がはるかに高くなることだろう」とし、勝ちを目指すインセンティブにはならないということです。


そこでクーパー氏が提案するのが、”タンキング税”の制度。

税と言ってもお金を支払うわけではなく、例えば2年連続で70勝に届かなかったチームはドラフトの指名順位を10個後ろにずらすというペナルティを科すもの。

1年だけなら翌年にドラフト全体1位で指名することができますが、2年連続でワーストの成績を残しても2年目は10個後ろにずらされるので全体11位指名になります。

また、3年連続なら指名権を15個、4年連続以降は20個ずらすというようにペナルティが厳しくなるという案です。

そして、ぜいたく税と同じように70勝以上を記録すればペナルティがリセットされます。

クーパー氏は「これにより、再建中のチームが上位のドラフト指名権を獲得することができるし、同時にサッカーの降格制度のように、メジャーレベルでの勝敗にも関心を持つ理由を与えることができる」と主張しています。

また、「”タンキング税が導入されれば、現在再建中のレッズやタイガースのようなチームが70勝に乗せるためにフリーエージェントの選手を1人か2人獲得する理由になる。シーズン中についても同じだ。ペナルティを受ける可能性があるチームが9月に試合に勝とうとする理由になる。例えば、3連勝がドラフト指名順位が4位になるか14位になるかの差になる可能性もあるのだから。失敗ではなく、(控えめとはいえ)成功に対して報酬を与えるシステムだ」としています。

クーパー氏は「70勝という基準はひとつの提案だ。ドラフト指名順位を10個ずらすペナルティについても同様だ。…詳細がどうであれ、核となるアイデアは変わらない。勝つことに対するインセンティブを与えることでより多くのチームが勝ちを目指すようになり、ファンやベースボール全体の利益になる。オフシーズンにおいても、純粋にチームを改善しようとすることでより多くのチームがお金を使い、ベテラン選手を助けることにつながる可能性がある。また、9月に4位と5位のチームが戦う眠気を誘うような試合にも関心を持つ理由を与えることになるだろう」とし、試合に勝つことへのインセンティブを与えることが重要だと述べています。

可能性が低いとはいえ、本気で優勝を目指して2年連続で70勝を下回ってしまうこともあるかもしれないですし、これがベストの案かはわかりません。ただ、もしあからさまに勝利に興味がないチームが多い状況を問題だと考えるなら、クーパー氏にように何らかの方策を考える必要があります。

そして、だれよりもその方策を考えなければならないのは選手会です。オーナーが金を使わないと非難するだけでなく、次の労使協定で選手に金が回ってくるようなシステムを勝ち取るために今から準備をしておく必要があると思います。

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Photo: Eric Kilby