DQi_VS6W4AIj6cb

大谷翔平が入団することが決定したロサンゼルス・エンゼルス。普段メジャーリーグを見ない大谷のファンの方々はどんなチームか気になっていることでしょう。

どんな選手がいるのか?優勝を狙えるチームなのか?など、エンゼルスの現状を紹介してみたいと思います。


2017年のエンゼルスは80勝82敗でアメリカン・リーグ西地区2位でした。
チーム成績は以下の通り。カッコ内はアメリカン・リーグ全15チーム中の順位です。

野手
得点 710 (11位)
打率 .243 (14位)
本塁打 186 (13位タイ)
盗塁 136 (1位)
出塁率 .315 (11位)
長打率 .397 (15位)
OPS .712 (15位)

投手
チーム防御率 4.20 (6位)
ー先発
防御率 4.38(6位)
奪三振率 7.34 (10位)
与四球率 3.12 (11位)
被本塁打率 1.56 (12位)
ーリリーフ
防御率 3.92 (5位)
奪三振率 9.51 (6位)
与四球率 2.66 (1位)
被本塁打率 1.15 (6位)

打線は盗塁こそリーグ1位ですが、長打率、OPSがリーグ最下位。得点数がリーグ11位と得点力不足です。投手陣はまずまずの成績でした。防御率で見ると先発が6位、救援が5位とほとんど変わりませんが、内容を見ると先発はそれほど良くないことがわかります。

先発投手で、打者としてはパワーが武器の大谷が持ち味を発揮すれば、チームのウィークポイントを埋める助けとなりそうです。

***

続いてポジションごとに選手を紹介をします。

捕手:マーティン・マルドナド

バッテリーを組むことになる大谷にとって特に大事なポジション。守備は非常に評価が高く、今年はゴールドグラブ賞、フィールディング・バイブル賞、ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています(参考1参考2)。Baseball Prospectusのデータでは、フレーミングとスローイングが特に優れています。盗塁阻止率38.7%はメジャー5位、二塁への送球の平均速度は86.5マイル(約139キロ)でメジャー3位でした(参考)。ただし来季いっぱいでFAになります。打撃はあまり期待できません。

ブルワーズ時代も含めた守備のハイライト集です。




一塁手:C.J.クロン

昨年ブレイクしたかと思ったところで故障。今年は100試合で.248/.305/.437(打率/出塁率/長打率)、16本塁打、OPS.741とまた平凡な成績に逆戻りしてしまいました。個人的にはまだ可能性はあると思っていますが、今のところ一塁手としては物足りない選手です。


二塁手:???

ここ数年弱点となっているポジションです。ケイレブ・カワートという選手がいますが、ほぼ間違いなく補強するでしょう。FAではニール・ウォーカー、長年エンゼルスの二塁手を務めたハウィー・ケンドリックなど、トレードではイアン・キンズラー、シーザー・ヘルナンデスなどが考えられます。


三塁手:ルイス・バルブエナ

低打率ながら長打力が持ち味の選手。今季は117試合で.199/.294/.432、22本塁打、OPS.727。アストロズでプレーした昨年は故障でシーズン終了しましたが、90試合で.260/.357/.459の成績でした。三塁も補強の可能性がありますが二塁ほど必須ではなさそうです。三塁手を獲得すればバルブエナを一塁に回し、クロンをトレードなどいろいろなシナリオが考えられます。契約は来年まで。


遊撃手:アンドレルトン・シモンズ

世界最高の守備を誇る遊撃手です。今季のDRS(守備防御点)+32は全ポジション全選手中トップ。フィールディング・バイブル賞は5年連続で受賞中。そして今年は打撃でも長打力が増し、.278/.331/.421、14本塁打、19盗塁、OPS.752の成績を残しました(参考)。

2017年の守備のハイライト集です。




左翼手:ジャスティン・アップトン

今年8月にタイガースから移籍。2チーム合計で.273/.361/.540、35本塁打、14盗塁、OPS.901の好成績でした。田中将大のようにシーズン終了後オプトアウト(契約破棄)する権利がありましたが行使せず、1年延長した5年1億600万ドルで契約延長し残留しました。主軸としての働きが期待されます。


中堅手:マイク・トラウト

文句なしに現役最高のメジャーリーガー。今季はヘッドスライディングで左手親指の腱を損傷し約6週間離脱しましたが、114試合で.306/.442/.629、33本塁打、22盗塁、OPS1.071と素晴らしい成績でした。さらに、自身初めて94四球、90三振と四球が三振を上回り、打撃内容としては自身最高のシーズンでした。故障さえなければMVP間違いなしと言ってもいいぐらいです。


右翼手:コール・カルフーン

今季は.244/.333/.392、19本塁打とやや低迷しましたが本来もう少し打てる選手です。強肩で守備も良く、横っ飛びのダイビングキャッチが代名詞。


DH:アルバート・プホルス

衰えが著しい元”最強打者”。149試合で.241/.286/.386、23本塁打。年々四球が減っており、ついに出塁率が3割を切りました。wRC+という総合的な打撃力を表す指標では平均の100を大きく下回る78。WARという総合的な貢献度を表す指標でも-2.0で初めてのマイナス。これは今季のメジャー全選手中ワーストの数字でした。

しかもこの成績で41歳まで4年1億1400万ドルの契約が残ります。長期大型契約の弊害を体現したような存在になってしまいました。


外野は3人のレギュラーが決まっており、大谷が野手として出場するのはやはりDHになりそうです。プホルスのような偉大な選手の出場機会を減らすのは簡単なことではありませんが、下半身の故障を考えると一塁での出場を増やすことも難しいでしょう。ソーシア監督は難しい決断を迫られそうです。

***

先発投手


ギャレット・リチャーズ
マット・シューメーカー
パーカー・ブリッドウェル
JCラミレス
ニック・トロピアーノ


タイラー・スキャッグス
アンドリュー・ヒーニー


ローテーション候補はこれだけいますが、ほとんどの選手が故障の不安を抱えています。

リチャーズは故障さえなければエースを任せられる実力の持ち主です。しかし、右肘靭帯の損傷や二頭筋の故障などでここ2年は6試合ずつしか登板できていません。

シューメーカーは右前腕の故障で手術を受けてシーズン終了。今季14試合で防御率4.52。

スキャッグスは2014年8月にトミー・ジョン手術を受け、2016年に復帰。今季は脇腹を痛めて16試合で防御率4.55。

ヒーニーも2016年7月にトミー・ジョン手術を受け、今季終盤に復帰。5試合で防御率7.06。

ブリッドウェルは21試合で10勝3敗、防御率3.64の好成績を残しましたが、内容を見ると運に恵まれていた感があるので過度な期待は禁物だと思います。

ラミレスは右肘靭帯の損傷が見つかりましたがトミー・ジョン手術は受けずに復帰を目指しており、先行きは不透明。今季は27試合(24先発)で防御率4.15。

トロピアーノは2016年8月にトミー・ジョン手術を受け今季全休。来季復帰予定。2016年は13試合で防御率3.56。

こうして見ると、肘や腕の故障が異常に多いですね。大谷も今季は故障で5試合の登板にとどまり、10月には右足首の手術を受けました。健康であればそれなりの結果が残せる投手たちですが、計算が立たない状況です。

そして、負担の大きい二刀流に挑戦する大谷や故障を抱える先発投手陣の負担を軽減するためにも、通常の5人ではなく6人のローテーションを採用する可能性もあるのではないかと思います。


リリーフ投手


ブレイク・パーカー
キャム・ベドローシアン
キーナン・ミドルトン
ジム・ジョンソン
ブレイク・ウッド
ノエ・ラミレス
エドゥアルド・パレデス


ホセ・アルバレス

今季は大物選手はいないものの密かに好成績を残したブルペン陣。しかし、ユスメイロ・ペティットやバド・ノリス、デビッド・ヘルナンデスなどがFA、トレードで抜けていますので、経験のあるベテラン投手を補強したいところです。

***

エンゼルスのマイナー組織は優秀な選手が少なく、評価が非常に低くなっています。最近はやや改善しつつあるようですが、今後数年でメジャーでインパクトのある活躍をする選手が出てくる可能性は他球団に比べると低いでしょう。

そして来季以降の地区優勝の可能性ですが、やはり同じ地区に今年ワールドチャンピオンに輝いたアストロズがいるため、かなり高いハードルと言えます。しかし、大谷と今後3年間は最低年俸に近い金額で契約できるため、その分を他の補強に回せるのは他球団にはない大きなメリットです。ワイルドカードでのポストシーズンは十分狙える位置にいます。

昨年のシーズン終了時の年俸総額は1億6600万ドルで、年俸調停の権利を持つ選手の予想年俸も含めた現時点でのチームの年俸総額はおよそ1億4500万ドルとなっています。昨年と予算が変わらないとすれば、このオフ補強に使えるお金はそれほど多くありません。

大谷という特別なピースを手に入れたビリー・エプラーGMは、このオフどんな動きを見せるのか。そしてなにより、大谷をどのような形で起用し”二刀流”を実現していくのか。今後のエンゼルスが楽しみです。