ワールドシリーズ第3戦でキャリア最短の1回2/3、4失点でノックアウトされたダルビッシュ有。試合後のインタビューで「スライダーがかなり抜けてしまっていた」と話していました。

ここにきて、スライダーが抜ける原因がワールドシリーズで使用されているボールにある可能性が浮上しました。

Sports Illustratedのトム・ベルドゥッチ氏の記事によると、今回のワールドシリーズで使用されているボールの革の表面がレギュラーシーズンで使われているものと違うということです。

次の写真は、アストロズのブレント・ストロム投手コーチがワールドシリーズとレギュラーシーズンのボールを並べて持っているものです。

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左がレギュラーシーズンのボール。メジャーリーグでは試合前にボールを泥でこねてから使用されますが、これは泥でこねていない新品のボールなので真っ白です。右がワールドシリーズで使用されているボールです。

どうでしょう。確かにボールの表面の凹凸が違う気もしますが、条件が違いますしこれだけでは正直わかりません。

しかし、選手やコーチたちは口々にワールドシリーズのボールは滑りやすいと証言しています。

アストロズのストロム投手コーチは「明らかだ。見ても分かるし、触っても分かる。同じではない。だれかが理由を説明しなければならない」と話しています。

ドジャースのリック・ハニーカット投手コーチは、ダルビッシュが先発した第3戦の後、「ユウは、ボールが滑りやすくてスライダーを投げるのに苦労した、と話してきた」とコメントしました。

アストロズのランス・マッカラーズJr.は、目をつぶった状態でどちらがどちらか言い当てることができたそうです。

ジャスティン・バーランダーも「ワールドシリーズのボールはより滑りやすい。間違いない。ボールにサインをするときにも、滑るから書きにくい時がある。スライダーを投げる時に特に違いを感じる。感覚が同じじゃない。ピーダーソンにホームランを打たれたボールもスライダーだった。」と話しました。

第2戦でバーランダーは17球スライダーを投げ、空振りは1つだけ。今季先発した36試合で最少タイの空振り数です。

ダルビッシュは第3戦で14球スライダーを投げましたが、空振りは1つもありませんでした。今季34試合の先発で初めてのことです。

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こちらはダルビッシュのワールドシリーズ前とワールドシリーズでの、スライダーのロケーションの比較です。ワールドシリーズでは高めに抜ける割合がかなり多いのが分かります。

ケンリー・ジャンセンは第4戦でアレックス・ブレグマンにスライダーを捉えられ、ホームランにされました。今季96球投げてホームランにされたのは初めてです。

第4戦で3失点し負け投手となったアストロズのケン・ジャイルズは、速球とスライダーが持ち球の投手。レギュラーシーズンではおよそ半分がスライダーで被打率.133の強力な武器ですが、ワールドシリーズでは12球中9球がボール。第4戦では8球中2球しかスライダーを投げず、ドジャースの打者に速球を狙われました。

第4戦で投手戦を演じたチャーリー・モートンとアレックス・ウッドの両投手はスライダーを投げません。

第3戦で3回2/3を無安打無失点に抑えセーブを挙げたアストロズのブラッド・ピーコックも、スライダーをほとんど投げませんでした。レギュラーシーズンでは37.5%の割合でスライダーを投げていますが、第3戦では53球中5球だけ。紫色で表示されているのがスライダーです。

MLBのピーター・ウッドフォーク氏は「ワールドシリーズのボールは生産の時にテストされ、レギュラーシーズンのボールと同じ材料、同じ基準で作られている」と話しています。

しかし、選手たちはボールの違いを感じ、パフォーマンスや球種選択に違いが出ていることは事実です。

ダルビッシュはツイッターでこうコメントしています。


第7戦までもつれこめば、ドジャースはダルビッシュが先発する予定です。もしそうなった場合、1年で最も大事な試合で、ボールの違いに対応しつつメジャー最強のアストロズ打線を抑えるという難題に挑むことになります。

レギュラーシーズンでも史上最多のホームラン数を記録し、ボールが原因ではないかと議論されてきました。そして今度はワールドシリーズで滑りやすいボールという問題。今後も、メジャーリーグで使用されるボールが論争の的となるのは間違いありません。