テキサスのダラス・モーニング・ニュースでレンジャーズの取材を担当するエバン・グラント氏が、明日初めてのワールドシリーズでの登板を迎えるダルビッシュ有についての記事を書いています。

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まず、昨年グラント氏が目にした、投手ダルビッシュの特長を象徴するエピソードを2つ紹介してくれています。それは”投球”ではなく”学習”に関するエピソードです。

1つ目は、「レンジャーズがカルロス・ベルトランをトレードで獲得した1週間ほど後、2人がクラブハウスで30分ほど話をしていた。話題は投球哲学についてだ。ベルトランはペドロ・マルティネスと話した時の内容や、敵としてダルビッシュをどう見ていたかを伝えた」という話。

2つ目は「9月初め、アストロズ戦で打ち込まれた後、シアトルのクラブハウスの床に座っていたダルビッシュが、私に向かって彼のiPadを見るようにジェスチャーで示してきた。球種選択に関する最新のデータが手に入り、それをむさぼるように見ていたのだ。彼はとても興奮していて、レポーターの私とさえ共有したがったのだ」というものです。

研究熱心なダルビッシュのイメージと一致するエピソードです。

レンジャーズ投手コーチのダグ・ブロケイルは、データの吸収に熱心なダルビッシュを「彼は情報を飲み込み、吐き出し、そしてもう一度飲み込む。反芻する牛のようだ」と例え、「彼は提示された情報は隅から隅まで目を通す。非常に勉強熱心だ」と話しています。

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そんなダルビッシュですから、移籍後にドジャースから与えられたデータを吸収し活用しようとしたことは驚きではありません。

そこで、グラント氏はドジャース移籍後のダルビッシュの変化について検証しています。

一般には、ドジャースがダルビッシュを変化させたとされています。具体的には、スローカーブとスプリットを投げるのをやめさせ、スライダーよりもカッターを重視し、腕を下げさせたというものです。

まず、腕を下げた点については、「リリースポイントが約3インチ下がった。しかし、シーズンのこの時期には疲労の蓄積により腕が少し下がるのは自然なことだ。カーショーやクルーバーもリリースポイントは下がっている」とし、どこまでが意図的なものかは断定していません。

また、球種の割合の変化に関しても、「データサイトによると、カッターが増え、スライダーが減っている。ただし注意しなければならないのは、投球の計測は進歩してきたが、特に球種の判別は完璧なものではないということだ。ブロケイル投手コーチによると、ダルビッシュは、打者に対してカッターのように使う速いスライダーを持っている」ということです。

以上をふまえ、グラント氏は「最も大きな違いとして考えられるのは、トミー・ジョン手術から復帰して1年以上経って、速いスライダーを投げる感覚を取り戻し、それを従来のスライダーとカッターに混ぜて使うようになったというものだ」と述べています。

スライダーのスピンレートは6月からほとんど変化がなく、違うのはカッターのスピンレートがスライダーに近くなっていることだそうです。これはつまり、データ上は速いスライダーがカッターと判別されているということでしょうか。

NLCSのカブス戦の登板を見たブロケイル投手コーチは、「以前と全く同じダルビッシュだった」とし、「彼はその時点での自分のベストピッチを知っている。それが機能している限りはそれを投げ続ける。そして状態が変われば、また他のベストピッチを見つける。今度のアストロズ戦でもっと緩いボールを使ったとしても驚かないよ」と話しました。

グラント氏は「一番の変化を挙げるとしたら、それは健康な腕を取り戻し、心配の種がなくなったことではないか。今のダルビッシュは、2012年にレンジャーズが契約した時、ワールドシリーズに先発すると考えていた危険な投手そのものだ」とまとめています。

アストロズはレギュラーシーズンで得点力メジャー1位のチーム。第2戦では14安打7得点で不調だった選手も目を覚ましました。そして本拠地ではポストシーズン6勝負けなしです。

完全体のダルビッシュと、調子を取り戻した最強アストロズ打線。どちらが勝つのか、明日の試合が待ちきれません。